川崎市の在日コリアン女性が起こした損害賠償請求訴訟が7月、横浜地裁川崎支部で結審した。焦点となるのは「帰れ」という排除の言葉の違法性だ。
10月の判決を前に、裁判所に意見書として提出された49人の声から、戦後も「帰れ」と言われ続けてきた朝鮮半島ルーツの人々の苦悩を追った。
訴訟を起こした女性は在日3世の崔江以子(チェカンイヂャ)さん(50)。「ハゲタカ」と名乗る茨城県の男性を相手に、305万円の損害賠償を求めている。
訴状によると、男性は2016年6月、崔さんを名指ししたタイトルで「日本国に仇あだなす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」と投稿。
崔さん側はこの投稿がヘイトスピーチ解消法が示す「排除」類型に当たる差別的言動で、違法などと訴えている。
「『帰れ』という言葉がいかに不当で、在日コリアンを傷つけてきた言葉か。歴史を知らず、他者の痛みへの想像力を欠いている」(途中略)
1910年の韓国併合の後、日本の植民地化による朝鮮での貧困の拡大と、安い労働力を必要とする日本の職場や政府の存在を背景に、多数の朝鮮人が日本に渡った。
戦後、生活基盤の喪失や南北分断などにより帰還を断念した朝鮮人が約60万人残った。日本政府はこれらの人々を、一律に外国人として管理統制と排除の対象とした。
「見えてきたのは、日本による朝鮮の植民地支配から続く『非対称な関係性』だった」。
朝鮮人は戦前は皇民化の対象だったが、戦後は外国人とされ、さまざまな権利から除外された。
「植民地支配で生まれた主従の力関係は、戦後も国籍問題に形を変えて続いた」。(途中略)
9月に100年を迎える関東大震災の際には、差別扇動による朝鮮人虐殺が起きた。
アンケートでは「自分を監視し、危害を加えようとする人がいないか恐怖」(女性)など「周囲への恐怖と不信感」を被害体験に挙げた人も多かった。
「在日コリアンの中には、親や祖父母世代から聞いた震災の『世代間伝達トラウマ(心的外傷)』を抱える人もいる。
再び日本人に攻撃されるかもしれない、という恐怖と『帰れ』もまたつながっている」。
差別が人への暴力への引き金となってきたことは、歴史が明示している。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/26980...
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