正常細胞では機能せず、多くのがん細胞で過剰発現しているc-Mycなどの転写因子が、ウイルスの「hTERTプロモーター」に結合することで、がん細胞特異的にウイルスを複製・増殖させ、細胞を破壊する治療法。
この仕組みは理論上、ほぼすべてのがん治療に有効であることを意味しており、実用化された食道がんだけでなく、多くのがんに対する有効性についても現在臨床試験が並行して進められている。
他のがんに対する主な治験・試験状況
食道がん(今回の承認・発売):放射線療法との併用で実用化。
頭頸部がん:放射線療法との併用、または免疫チェックポイント阻害薬(キイトルーダなど)との併用で、日本および米国で臨床試験(フェーズI/II)が進行中。
直腸がん:放射線療法との併用で、日本国内で臨床試験が進行中。
肝臓がん・胃がん:ウイルスの局所注射による安全性や有効性を確認する初期の臨床研究が重ねられている。
補足
人間のがん細胞全体の約85%〜90%でテロメラーゼが発現している。
テロメライシンに組み込まれている「hTERTプロモーター」は、がん細胞がテロメラーゼを発現する(作る)ためのプロモーター(スイッチ)と機能上全く同じ。
そのため、がん細胞がテロメラーゼを発現させようとスイッチを入れると、テロメライシンの増殖スイッチも強制的にONになる。すなわちウイルスの増殖スイッチも同時に自動でONになる
この仕組みにより、テロメラーゼを発現しているすべてのがん細胞を理論上もれなく標的にして、増殖・破壊することが可能。
理論上、有効となる主ながんの種類
テロメラーゼが発現している、以下のようなほぼ全身のがんが理論上の射程圏内
消化器がん:食道がん(実用化済)、胃がん、大腸がん、直腸がん、肝臓がん、膵臓がん
呼吸器がん:肺がん(非小細胞肺がんなど)
頭頸部がん:咽頭がん、喉頭がん、舌がん
婦人科・泌尿器がん:乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん
逆に、効かない「約10%」の例外(テロメラーゼがないがん)
ALT(代替的テロメア延長)陽性がん:テロメラーゼという酵素を使わずに、染色体同士を組み換える別の特殊なルートで寿命を伸ばす性質のがん(一部の骨肉腫や、脳腫瘍の一種である神経膠腫(グリオーマ)の一部など)。
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