
●手術の不要性と消費者問題
メディアの側も、包茎手術が広まるのをただ傍観していたわけではなかった。
1994年と96年に、雑誌『AERA』と『DENiM』が異なる観点から包茎手術ビジネスを
批判する記事を出している。
『AERA』は「包茎手術大国を生んだ性文化の未熟」と銘打って、病気でない包茎への
手術が医学的にいかに無意味であるか、それなのに男性たちや男の子を持つ親たちが
いかに翻弄されているか、を専門家への取材をふまえつつ報じている。
背景には人びとの圧倒的な知識不足がある。
病気ではないために泌尿器科医は真剣に取り上げず、性教育でもきちんと教えられていない。
そこに「包茎ボーイじゃ結婚できないぞ」などと、包茎ビジネスの広告が脅しをかけ、
不安ばかりがふくらんでいくのだと記事は分析している。
別の号の『AERA』では、手術でひどい目にあった男性たちと、施術をしたクリニックの
両方に取材することで、包茎ビジネスの闇を深掘りしている。
ギザギザ模様の縫合跡をつけられてしまい、「しない方がよかった」と肩を落とす
元仮性包茎の26歳自営業のほか、亀頭のブツブツを治すつもりで行った病院で
包茎手術もされ、予算の5倍以上の治療費をとられた29歳公務員が登場している。
勃起時に12センチあった公務員のペニスは手術後に7センチになってしまった。
再手術を2回しても治らず、すべてに自信がなくなり、縁談が破談になった。
浪人時代に受けた包茎手術が失敗し、意気阻喪して大学受験も失敗した25歳、
アルバイト代をためて受けた手術でペニスに醜痕がついたうえ、なかに縫合糸が残っており、
ふたたび高い料金を払って再手術を受けた20歳も登場している。
全員に共通していたのは、雑誌広告を見て手術を決心し、病院を選んだことだった。
『DENiM』は二度にわたって、仮性包茎の手術に保険が効かない健康保険制度の矛盾を
あばく記事を掲載した。
厚生省(当時)は、真性は疾病扱いだが仮性はそうではないので保険が効かないと
説明する一方、仮性をあたかも病気であるかのように記す病院の冊子にかんしては、
病院内で配布する印刷物は医者に一任していると答える。
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