透視実験の一種では、絵の入った封筒が被験者に渡される。
被験者は、封筒とともに一人で残され、その後、封筒を実験者に戻し、
開封の痕跡がないとの確認を受け、封筒に入っていた絵を当てる。
二人の少年は、この実験で、かなりの成功を収めた。
一〇〇パーセントでなかった理由は、少年たちが、成功率が高すぎると
逆に怪しまれると考えて、故意に成功率を下げたからである。
手順は簡単だった。封筒は、数個のホッチキス針で留められていたので、
それらを外して中身をのぞいてから、もとのホッチキス針の跡に、
うまくホッチキス針を留め直したのである。
マイケルは、実験中にホッチキス針を失ったことがあったが、
それをごまかすために、実験者に対面した際、腹を立てて
自ら封筒を破ってみせた。
この種の実験内容の変更も、そのまま受け入れられてしまった。
研究所を訪れたミネソタ大学教授の物理学者オットー・シュミットは、
二人に小型デジタル時計を渡して、超能力で変化させるように指示した。
最初から完全に密封されている製品である。
マイケルは、昼休みに、この時計を研究所から隠して持ち出し、
セルフ・サービス式のレストランで昼食を取ったとき、
それをサンドイッチに挟み、電子レンジにかけた。
デジタル時計は完全に狂って、意味不明の液晶表示を始めた。
シュミット教授は、これこそが「超能力のすばらしい威力」だと言って、
マスコミに驚嘆してみせた。
ニュージャージー州のリハビリテーション・エンジニアリング国立研究所では、
精神科医バーソルド・シュワルツが、スティーブを被験者とする実験を行い、
膨大な報告書を作成した。
彼は、スティーブにビデオカメラを渡して、周囲を撮影するように指示した。
そのビデオテープを現像すると、いくつかのコマの中ほどに、奇妙にぼやけた
渦巻が写っていた。
シュワルツは、それらの「渦巻」の中に、「動いている顔、キリストの顔、
UFO、女性の胸像、乳首、胸、太腿、生まれてくる子ども」を発見して、
詳細な精神分析を行った。
その場にいた研究員らは、フィルムにそのようなものが現れた原因を
「超常現象」以外とは思えなかった。
ところが、実際には、その渦巻は、スティーブがレンズの上に吐いた
唾だったのである。
返信する