>>9 ●マッスル北村 著『ボクの履歴書』より
「『名犬ラッシー』をきっかけにボクは学校の図書室の動物物語を
片っ端から読みあさった。
外では、他の子どもたちがワイワイとサッカーやドッヂボールに興じる声がして、
ちょっとうらやましかったけれども、本のページを広げたとたんに物語の世界に
入り込んでいった。
シートン動物記やファーブル昆虫記、戸川幸夫全集や椋鳩十全集などだ。
そして動物たちが、本能だけでは説明のつかない行動をしばしば取ることを知った。
飼い慣れると野生の動物ですら主人から受けた恩が、心の中のいちばんの宝物となる。
ときに、人間であるかつての主人を救うために、群れの仲間の掟を破り一身を
投ずるのである。
ワシやカラス、ニワトリやカモ、クマやトラ、イノシシまでが惜しげもなく
自らの命を投げ出すのである。
小学一年生の頃のボクの一番の親友はスズメの“ピーコ”であった。
(中略)
『ただいまー!』のボクの一声でたちまちボール紙で作った
小さな巣箱から飛び出してきてちゅんちゅん鳴きながら肩や頭に飛び乗り、
しまいにはボクのくちびるの内側に頭を突っ込むのである。
いわゆるスズメの口づけである。
学校でどんなに辛いことがあってもピーコがボクをなぐさめてくれた。
ピーコだけではなくいろいろな動物との対話体験から、本の中の物語が
フィクションでないことをボクは知っていた。
心なき人間のために迫害され、いたずらに滅んでいく動物たちの姿を痛ましくも感じ、
目を真っ赤にして読んだものだった。
幼いながらも、地上の生きとし生けるもののすべてが愛を求めて生きていることを知った。」
「動物と暮らしてわかったことだが、彼らの愛の情熱は人間と違って弱まることを知らない。
朝から晩まで顔をつき合わせていても嫌気がさすこともなく、
仮に主人が社会的に落ちぶれようがぐれようが、周りの人間から愛想を尽かされても、
可愛がられたという思い出を決して忘れない。
彼らのいたいけな愛は弱まるどころか日ましに強くなる一方なのだ。
ボクはそういう愛に守られて育った。」
返信する