政府は、武器を含む防衛装備品の輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」の緩和へかじを切ろうとしている。
国が主導して輸出拡大を進めるとの新方針を、今週内にも行う「国家安全保障戦略」など安保3文書の改定で明記する方向という。
アジア太平洋で勢力を広げる中国への対抗や、販路拡大による防衛産業の再生が狙いのようだ。
だが、日本製の武器の輸出や供与が増えれば、間接的でも国際紛争に加担する懸念が拭えない。武力解決にくみしないとしてきた国際的信用を失いかねない。
日本は従来、武器輸出三原則で禁輸政策をとってきたが、2014年に安倍晋三政権が「防衛装備移転」と言い換えて解禁し、翌年に防衛装備庁を発足させた。ただ、完成装備輸出はフィリピンへのレーダー契約1件にとどまる。
今回の見直しで政府は、殺傷能力を持つ武器の輸出も、相手国の抑止力を通じて日本の安保に資する場合や、ウクライナのような国際法違反の侵略を受ける国に認める案を与党の検討会に示した。
背景には、防衛力増強を急ぐ政府方針と併せ、防衛産業の衰退への危機感があるようだ。
島津製作所が航空機事業の再編を検討するなど、防衛部門から撤退する企業が相次いでいる。対米関係を重視する安倍政権下で米国製装備の輸入が増えた一方、国内発注が限られているためという。
見直しは、国際共同開発・生産の相手国に限定している攻撃装備の供与先を、第三国へも拡販できるようにする方向だ。
折しも先週、日本、英国、イタリアで次期戦闘機の共同開発を、日米で無人機研究を行う計画が発表された。日英伊の共同声明には防衛協力の拡大とともに経済的利益がうたわれ、浜田靖一防衛相は完成品の第三国輸出に意欲を示した。
だが、「稼げる産業育成」を目的の一つとして、殺傷能力を持つ武器を売り広めることが、憲法の掲げる理念にそぐうのか。
日本製武器が戦闘で使われ、紛争を助長する恐れが強まり、国際的批判を浴びかねない。相手国の適切な管理を条件としても無断転売された事例があり、紛争当事国への流出の歯止めは容易でない。
国内外に掲げてきた平和国家の規範を政府、与党だけの検討で拙速に変えることは許されまい。徹底した国民的議論が不可欠だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9131ca8f36664516c3047...
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