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■「地面師たち」の“下着を外さないセックスシーン
最近、劇中の表現として非常に印象的だったのは、Netflixドラマシリーズ「地面師たち」の、役者が絶対に下着を外さない不思議なセックスシーンだった。
Netflixの予算規模の大きさに製作陣の実力が存分に発揮され、ストーリー展開上、エロもグロも正当に必要な作品。
無駄に扇情的なシーンが挟まれるような品質のドラマじゃない。
細部にこだわりと気配り目配りが利く作品なだけに、役者が下着をつけたままのセックスシーンを見たとき、
「なるほど、制作はこの不自然さ、非現実みを現代の表現ルールとして受け入れたのだな」と感じたのだ。
これは「地面師たち」に限った話ではなく、Netflixなどの配信系プラットフォームに載るハリウッドメイドの映画にも最近(一律で)よく見られることだ。
役者の権利を守り、幅広い視聴者の目にふれる作品であるために、不自然であっても表現を丸める。その功罪は今はまだわからない。
だが、「本当の性」を潔癖にエンタメの表面からウォッシュしていけば、それは裏側に深く潜ってただ過激化し先鋭化し、やはり結局「本当の性」から離れていくだけのような気もしている。
■子どもたちは「触れ方」をどう学ぶのか
エンタメの表面たるメジャー作で本当の性が描かれない。
だが日本はそもそも文化的に人と人の物理的接触が少なく、挨拶がわりのキスやハグなどの習慣がない。
街中や公共の場でカップルがスキンシップしている姿もまれで、せいぜい手を繋ぐのが社会的に許容されている程度だ。
じゃあ、子どもたちはどこでどうやって「他者に触れる」方法を学ぶんだろう。ふとそんな疑問が湧く。
■痴漢が増える日本
先日、AbemaPrimeという番組にコメンテーター出演した折、痴漢の再犯を繰り返してしまい正常な社会生活が送れないことから「痴漢外来」なる精神科に通う男性と、
痴漢の精神療法を研究する大学教授の話をうかがう機会があった。
痴漢はWHOの国際疾病分類にも記載されており、治療の必要な性依存症であるという世界共通の公式見解がある。
すでに治療法は確立されており、治療による効果も統計で証明されている、という話だった。
それにしても日本の痴漢件数だけが世界的に異常な突出を見せているのだ。何がその原因なのか、社会的なものか民族的(?)な身体特性でもあるのか、
と聞いたところ、その答えは「痴漢が犯罪行為に及ぶようになるのは、満員電車が圧倒的なトリガー(きっかけ)」だったのだ。
他者に日常的に触れる習慣がなく物理的距離を保つ日本。突然他者と密着する状況におかれた時にそれを悪用し、
ましてや依存的に犯罪を繰り返す者が多数現れる。
「距離を保つ」か「痴漢」か、ひとたび他者に触れる話になると両極端な様相を呈する社会で、
子どもたちに性をポジティブに教えるのはなかなか難しそうである。
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