ちょっとした贅沢食材として重宝されてきた牛肉に異変が起きている。
総務省が公表した家計調査結果によると、ここ数年で牛肉の購入量が継続的に減少していることがわかったのだ。
なぜ「牛肉離れ」が起きているのか。今回はその実情について、農畜産物流通コンサルタントの山本謙治氏に話を伺った。
■国産牛のなかで和牛の割合が3分の2以上
和牛は、国内で生まれ育ち、特定の品種(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種、これらの交雑種)の牛の肉を指す。
肉質が良く、その肉質が高く評価され、高級食材として扱われることが多い。
なお、和牛は国産牛という大きなカテゴリーのなかの一種ということだ。
「実は国産牛のなかで和牛が占める割合は3分の2以上となっています。
『肉用牛の品種別等数割合(令和4年度)畜産統計より算出したデータ』によると、現在の肉用牛の頭数と品種別割合は、黒毛和種が67%(176万頭)、交雑種が21%(56万頭)、ホルスタイン種10%(25万頭)となっているのです。
つまり、おのずと和牛の消費量も減少していると推定でき、『和牛離れ』が起こっているとも言えるでしょう」
■さらに和牛のなかでA5の割合が約3割
そんな和牛だが、ある特殊な事情で購入量減少のピンチに陥っている可能性が高いのだという。
「前述したとおり日本での肉用牛の3分の2以上を和牛が占めているわけですが、その和牛のなかの等級別に見てみると、実は最上級のA5ランクの生産量が圧倒的に多い状況なのです。
『和牛における等級別発生割合(令和5年度 年別・月別の品種別・性別ごとの格付結果日本食肉格付協会)』によると、割合的に最も多いのがA5ランクの29%となっており、A4ランクは14.8%、A3ランクは5.6%となっています。
本来であれば価値が高いものは最も少ないものですが、現在は和牛において最上級のA5ランクが大きな割合を占めており、価値の希少性が薄れている状況なのです。
脂身のサシが多く含まれるA5ランクは、一般消費者が普段の料理に使用するには扱いづらく、牛肉業界内ではA5ランクよりもA3、A4ランク牛の需要のほうが高いという声も上がっています」
和牛に対してネット上では、若者は値段が高いためなかなか手が出せず、高齢者は脂身が苦手でなかなか手が伸びない、といった意見も出ている。
最も高額で脂身も多いA5ランクの流通が一番多いとなれば、需要が減退してしまっているのも納得だろう。
だが牛肉市場は、なぜ希少価値が高かったはずのA5ランク和牛が、圧倒的な割合を占めるという歪な構造になってしまったのだろうか。
■最上級のA5ランクが大量に出回るワケ(以下略)
https://gendai.media/articles/-/13907...
返信する