老衰死は死ぬまでがたいへんなのです。
それまで元気でいて急に衰えるわけではなく、死のかなり前から全身が衰え、
不如意と不自由と惨めさに、長い間、耐えたあとでようやく楽になれるのです。
視力も聴力も衰えますから、見たり聴いたりの楽しみはなく、
味覚も落ちますから美味しいものを食べてもわからず、
それどころか食べたら誤嚥して激しくむせ、
そのたびに誤嚥性肺炎の危険にさらされ、
腰、膝、肘とあらゆる関節痛に耐え、寝たきりになって、
下の世話はもちろん、清拭や陰部洗浄、口腔ケアなどを受け、
心不全と筋力低下で身体は動かせず、呼吸も苦しく、言葉を発するのも無理
というような状況にならないと、死ねないのが老衰死です。
メディアではこういうイヤな事実はめったに伝えません。
もちろん、みんながみんなそうなるわけではなく、なかには安らかに
息を引き取る人もいるでしょう。
しかし、その理想的な状況だけをイメージしていると、心の準備ができず、
実際の老衰がこんなに苦しいとはと、余計な嘆きに苛まれる危険性は大です。
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