岸田首相の電撃的な退陣表明を報じる8月15日付の読売新聞を読んでいて、ある米政府高官が本紙に語ったというコメントに目が留まった。
「自民党が政権を握っている限り、日本の外交が劇的に変わることはないというのが米政府の一般的な見方だ」
●立民の源流・民主党が張った違憲論
首相が交代しても容易には揺るがない日米関係の強固さを表現したのだろう。
ただし、「自民党が政権を握っている限り」という条件付きだ。裏を返せば、自民以外の政党が政権を握ると日米関係が変質しかねないことを疑っているコメントにも見える。
自民以外で政権に就く可能性のある政党の筆頭は、野党第1党の立憲民主党だ。
この米政府高官が立民の対米政策に懸念を抱いているとすれば、その原因のひとつは、立民の安全保障関連法に対する態度に起因しているのではないか。
安倍政権下の2015年9月に成立した安保関連法は、一定の条件下で自衛隊が米艦艇を護衛できることなどが定められている。翌16年3月に施行され、有事を想定した日米の共同作戦や演習のベースとなる、日米同盟の根幹をなす法制だ。
当時の野党第1党は、立民の源流である民主党だった。民主党の岡田克也代表(現・立民幹事長)は、安保関連法案に対して「憲法に合致していない」と違憲論を張り、国会周辺のデモ隊の前で、「日米安保条約破棄」を掲げる共産党とともに法案成立阻止を訴えた。
●あれから10年弱、態度は曖昧
あれから10年弱。民主党の流れをくむ立民の安保関連法に対する態度は曖昧だ。
直近の国政選である22年参院選の公約には「違憲部分を廃止する」と記されたが、どの部分が違憲で、具体的にどこをどう変えるのかは明示されていない。同年12月に党の外交・安全保障戦略プロジェクトチームがまとめた「外交・安全保障戦略の方向性」では、防衛力強化などに一定の理解を示しつつ、安保関連法への言及はなかった。
時間の経過につれ、立民内では「政権を目指す以上、安全保障政策の根幹を変えるのは望ましくない」との現実論が広がっているが、党内左派には依然として違憲論が根強い――そんな党内事情のジレンマが、曖昧な態度の背後に見え隠れしている。
もし今のまま立民が政権与党となったらどうなるか。米政府は、自衛隊と米軍との連携を後退させないよう厳しく求めるとみられる。一方、国内では「違憲部分の廃止」という公約の実現を求める勢力から突き上げられ、板挟みに遭うに違いない。
●米軍普天間飛行場移設のため、埋め立て工事が進む辺野古沿岸部
その光景は、かつての民主党政権とだぶって見える。
民主党は、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先を巡り、「最低でも県外」と訴えて09年に政権を奪った。だが、その後は従来計画の県内移設の実行を迫る米国と、県外移設を求める国内勢力の板挟みとなり、政権の体力を消耗し、日米同盟の信頼関係を傷つけ、政権担当能力への大きな疑問符だけが残った。
●まもなく、代表選が告示
まもなく、立民の代表選が告示される。
以下ソース
https://www.yomiuri.co.jp/column/politics01/20240829-OYT...
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