日本が官民を挙げ、ハード・ソフト両面から支援し、オールジャパンによる初の鉄道輸出プロジェクトとして2018年に開業するはずであった、ベトナムのホーチミンメトロ1号線。
しかし、着工から10年を経過した今も開業に至っていない。
当初は業界内でも優良案件として捉えられており、同時期に着工したインドネシア・ジャカルタMRTプロジェクトとしばしば比較されてきた。
ジャカルタ案件こそが「ババ」という見方も強かったが、現実にはジャカルタMRTは予定通りに2019年の開業を果たしたのみならず、順調にオペレーションを続けており、成功事例として評価されるほど立場は逆転した。
■いつでも開業できそうに見えるが…
そんな中、開業の遅れから、ホーチミンメトロ1号線の車両をはじめとした鉄道システム一式を受注している日立製作所が
同プロジェクトの施主であるホーチミン市人民委員会鉄道局(MAUR)に対し、約4兆ドン(約246億160万円)の賠償請求を行っていることが明らかになった。
インフラ部分の工事進捗率自体は9割を超え、いつでも開業できるかのように見えるホーチミンメトロ1号線だが、一体何が起きているのか。
車両は基地の工事進捗を待つ形で、2020年10月に1編成目がようやく到着、2022年5月までに全17本が搬入された。
2023年12月には同プロジェクトに対し、4回目として412億2370万円の円借款供与が実施された。
円借款はプロジェクト進捗に応じて複数回に分けて供与されるのが一般的であり、要するにこれだけの額面部分が完成していなかったことを意味する。
開業予定時期から5年も遅れて新たな追加借款があることに驚かされる。
MAURは2023年8月に車両の地下区間への入線も果たされたことを受け、2024年7月開業と公表していたが、
最後の借款供与から半年後に開業するなど、常識的に考えてあり得ないことである。
■他都市でも開業遅れるベトナムの事情
本来なら開業予定時期の半年前ともなれば、目に見えるところでは乗務員のハンドル訓練が連日行われ、
次いで実際のダイヤに則した試運転も開始されて然るべきであるが、今年5月下旬時点に至ってもこれらが実施された形跡はない。
沿線住民や在留邦人による目撃談によれば、メーカーによる走行試験のみ行われているようだが、それも1日1~2往復あるかどうかといった具合である。
■中国すら手を出したがらない
日本の鉄道システムの有力輸出先と見られていたベトナムだが、業界での評価は一転した。
同国には南北高速鉄道という超大型案件も控えており、関係者によればベトナム政府から日本側への打診もなされているそうだが、このような状況ではうかつに手を出せないと言う。
これは当然だろう。もはや中国ですらベトナム案件には積極的に関わりたくないといわれている中、では日本が出ればいいというのは早計だ。
そのような精神論が日本政府から出ないことを願いたい。
記事から抜粋
https://toyokeizai.net/articles/-/778742?utm_source=s... 全車納入済の日立製車両が動く日は来る?
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