中国は、「ふしぎな国」である。
いまほど、中国が読みにくい時代はなく、かつ、今後ますます「ふしぎな国」になっていくであろう中国。
その過酷な様子は、武漢在住の著名作家・方方(元湖北省作家協会主席)が『武漢日記』(邦訳は河出書房新社、2020年)に記した通りだ。この中国初の「封城」は、「いざという時は900万武漢市民を見殺しにしても、14億中国人が生き残る」ことを決断した措置だった。
日本では考えられないような強硬措置だったが、「新規感染者が2週間連続ゼロになったら『封城』を解く」というかねての約束通り、同年4月8日に武漢は「解放」された。900万市民は一斉に外に飛び出し、花火を打ち上げたり、スマホのライトをきらめかせたりして喜びを分かち合った。
この武漢の「封城」は、習近平政権にとって大きな成功体験となった。中国は集中的かつ徹底的にコロナを封じ込めたおかげで、その後急速な「復工(フーゴン)復産(フーチャン)」(仕事と生産の復活)を果たしたのだ。同年のGDP成長率は2.3%に達した。G20(主要国・地域)の中で唯一のプラス成長だった。
それから2年を経た2022年、コロナウイルスは、アルファ株→ベータ株→ガンマ株→デルタ株、そしてオミクロン株へと変異していた。オミクロン株の特徴は、より容易に感染する代わりに、重症化リスクが低いことだった。欧米では「もはやただのカゼでしょう」と言って、マスク着用さえ止めてしまった。
そんな中で中国だけは、「動態清零」に固執し続けた。2022年3月17日、習近平総書記は党中央政治局常務委員会議を招集し、強調した。
「国民第一、生命第一を終始堅持し、科学的精確さと『動態清零』を堅持するのだ。それによってウイルスが急速に拡散、蔓延していく勢いを食い止めるのだ」
こうして中国全土で、少しでもコロナ患者が出たら、その町を「封城」するという極端な「動態清零」が取られるようになった。習総書記の「親臣(チンチェン)」(側近の部下)楼陽生党委書記が治める河南省などは、許昌市に住む20代の女性一人が感染したとして、その地域に住む70万人を「封城」してしまった。
最も悲惨だったのは、中国最大の経済都市・上海だ。こちらも習近平総書記の浙江省党委書記時代の「親臣」李強党委書記が治めていた。
4月、5月と「封城」した上海は、2年前の「武漢の再来」だった。だが当時の武漢では、公式発表だけで3869人もの人々がバタバタと死んでいたが、上海で流行っていたのは、欧米人が「カゼのようなもの」と楽観視するオミクロン株だ。それなのに武漢方式の措置を取ることは、中国で最も合理的思考をする2500万上海市民にとって、耐えがたいことだった。
4月11日には、封鎖したマンション群を視察に訪れた李強党委書記を、上海市民たちが罵倒するという衝撃的な映像が、SNS上にアップされた。これによって、次期首相候補に名前が挙がっていた李書記が失脚したという噂も、一時は上海を駆け巡った。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1840e5367de793017b4fa...
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