「病院にハマス司令本部」の証拠なければイスラエルへの停戦要求は増す ジェレミー・ボウエン BBC国際編集長
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イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区のガザ市にあるアル・シファ病院に入ってから、すでに数日がたった。17日の時点でイスラエル軍は、この病院がイスラム組織ハマスの重要な司令本部だったと示す証拠を、引き続き捜索している様子だ。
病院内の様子を第三者が客観的に点検できる状態ではないことを、留意する必要がある。報道陣はガザ地区内に自由に入ることができないし、現時点で病院内から報道している者はだれもがイスラエル軍の監督下にある。
イスラエルがこれまでに提示した証拠には、今のところ、病院についてイスラエルが展開していた言説を信じさせるだけの説得力が欠けていると私は思う。イスラエルはこれまで、アル・シファ病院がハマスの指揮系統の中心だと示唆していたが、イスラエルがすでに示した証拠はその説得材料になっていないと思う。
もし本当に病院内に指揮系統の中枢があったのなら(その可能性は2014年から取りざたされていた)、その存在についてイスラエルはこれまでのところ外の世界にその決定的な証拠を明らかにしていない。
見つかった中にあるのは、カラシニコフ・ライフルがいくつか(中東ではよく使われている)と、トンネルの入り口(ガザ地区にはたくさんある)、いくらかの軍服と、爆発物が仕掛けられた車両だった。
もちろん、ハマスの大規模な司令本部とその証拠が今後、病院の下にみつかる可能性はまだある。
そもそもアル・シファ病院は、1970年代にガザ地区を完全占領していた当時のイスラエルが建てたものだ。その規模からして、徹底的に調べるには時間がかかる。
しかし、アル・シファを設計したイスラエルの建築士たちが、広い地下室を病院施設に含めたことは、よく知られている。
【画像】アル・シファ病院にとどまる患者と避難者(11月10日)
病院内の様子を第三者が客観的に点検できる状態ではないことを、留意する必要がある。報道陣はガザ地区内に自由に入ることができないし、現時点で病院内から報道している者はだれもがイスラエル軍の監督下にある。
イスラエルがこれまでに提示した証拠には、今のところ、病院についてイスラエルが展開していた言説を信じさせるだけの説得力が欠けていると私は思う。イスラエルはこれまで、アル・シファ病院がハマスの指揮系統の中心だと示唆していたが、イスラエルがすでに示した証拠はその説得材料になっていないと思う。
もし本当に病院内に指揮系統の中枢があったのなら(その可能性は2014年から取りざたされていた)、その存在についてイスラエルはこれまでのところ外の世界にその決定的な証拠を明らかにしていない。
見つかった中にあるのは、カラシニコフ・ライフルがいくつか(中東ではよく使われている)と、トンネルの入り口(ガザ地区にはたくさんある)、いくらかの軍服と、爆発物が仕掛けられた車両だった。
もちろん、ハマスの大規模な司令本部とその証拠が今後、病院の下にみつかる可能性はまだある。
そもそもアル・シファ病院は、1970年代にガザ地区を完全占領していた当時のイスラエルが建てたものだ。その規模からして、徹底的に調べるには時間がかかる。
しかし、アル・シファを設計したイスラエルの建築士たちが、広い地下室を病院施設に含めたことは、よく知られている。
【画像】アル・シファ病院にとどまる患者と避難者(11月10日)
●アル・シファ次第で大きく変わる
イスラエル軍がすでに何かを発見したけれども、(軍事上あるいは安全上の)理由が何かしらあって、まだ公表しないことにしたのだという可能性も、もちろんある。
何か見つけている場合、なぜ公表しないのかは、はっきりしない。アル・シファ次第で、イスラエルの状況は大きく変わるからだ。
ハマスによる奇襲攻撃で今回の戦争が10月7日に始まり、ハマスがイスラエルの民間人を中心に約1200人を殺害して以来、イスラエルはこのアル・シファ病院にたどり着くことが、主要な目的のひとつだとしてきた。
ハマスがガザ地区の医療施設を作戦行動の隠れ蓑(みの)にしていると立証することが、イスラエルにとって重要な目的だ。そしてハマスはそうしたイスラエル側の主張を、再三否定してきた。
ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエル軍は1カ月余りで1万1500人以上を同地区で殺害してきた。これほど大勢を殺したことを正当化するため、ハマスは民間人を人間の盾にしているのだとイスラエルは主張してきた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日夜のインタビューで、ハマスは病院に軍事司令本部を置いていると主張した。
首相はさらに、アル・シファ病院の近くの民家でイスラエル人の人質が遺体となって見つかったことから、人質も病院で捕らわれているのだという「強い兆候」があるとも述べた。
ガザ地区内でハマスが人質にするイスラエル人200人以上の解放について、カタールを介した交渉は続いている。
しかし、アル・シファにしろ別の場所にしろ、ハマス司令本部の存在を示す確たる証拠が見つからなければ、停戦交渉をイスラエルに求める国際社会の圧力は増大する。
イスラエル軍がすでに何かを発見したけれども、(軍事上あるいは安全上の)理由が何かしらあって、まだ公表しないことにしたのだという可能性も、もちろんある。
何か見つけている場合、なぜ公表しないのかは、はっきりしない。アル・シファ次第で、イスラエルの状況は大きく変わるからだ。
ハマスによる奇襲攻撃で今回の戦争が10月7日に始まり、ハマスがイスラエルの民間人を中心に約1200人を殺害して以来、イスラエルはこのアル・シファ病院にたどり着くことが、主要な目的のひとつだとしてきた。
ハマスがガザ地区の医療施設を作戦行動の隠れ蓑(みの)にしていると立証することが、イスラエルにとって重要な目的だ。そしてハマスはそうしたイスラエル側の主張を、再三否定してきた。
ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエル軍は1カ月余りで1万1500人以上を同地区で殺害してきた。これほど大勢を殺したことを正当化するため、ハマスは民間人を人間の盾にしているのだとイスラエルは主張してきた。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日夜のインタビューで、ハマスは病院に軍事司令本部を置いていると主張した。
首相はさらに、アル・シファ病院の近くの民家でイスラエル人の人質が遺体となって見つかったことから、人質も病院で捕らわれているのだという「強い兆候」があるとも述べた。
ガザ地区内でハマスが人質にするイスラエル人200人以上の解放について、カタールを介した交渉は続いている。
しかし、アル・シファにしろ別の場所にしろ、ハマス司令本部の存在を示す確たる証拠が見つからなければ、停戦交渉をイスラエルに求める国際社会の圧力は増大する。
ここ42日の間にイスラエルはガザ地区であまりに多くの民間人を殺した。そのためアメリカ国内でも、イスラエルの手法について懸念がたかまっている。そしてイスラエルが本当の意味で気にする主要国は、アメリカだけだ。
アメリカのジョー・バイデン大統領は当初から、イスラエルには自衛権があるものの、その行使は正しい方法でなくてはならないと述べた。正しい方法とはつまり、戦争法に従うことを意味する。
15日には国連安全保障理事会が、「人道的休止」の延長を求める決議案を採択した。アメリカは拒否権を行使しなかった。
これは重要な展開だった。ガザ情勢についてハマス非難を含まない決議案に、アメリカとイギリスが初めて、拒否権を使わなかったのだ。
●「さらにテロを醸成」
加えて興味深い展開のひとつとして、世界各国の元首脳たちからなる非政府組織(NGO)「長老たち(The Elders)」が、ハマスを非難しつつ、「ガザを破壊し民間人を殺すことは、イスラエルの安全を増すことにつながらない」とする声明を発表した。
「長老たち」は、イスラエルのこうした行動が「中東内外でさらにテロリズムを醸成することになる。この紛争は軍事的手段では解決できない」とも述べた。「長老たち」は、ジミー・カーター元米大統領や南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領らが2007年に結成した。
つまり、停戦要求の圧力はひたすら高まり続けているし、イスラエルはそれを承知している。イスラエルの戦略を疑問視する声が高まる中で、その圧力はいっそう強くなる。
そうそう簡単に終わる状況ではない。「やるべきことはやったのでガザを後にできる」とイスラエルが言えるような、明確な区切りとなる瞬間は今後ないだろうと私は思っている。
そして、その翌日からどうするのかという計画も、イスラエル政府にはないようだ。ネタニヤフ氏は、「テロの再浮上」を阻止するためガザ地区の治安維持にイスラエルはしばらく責任を負うのだろうとしか言及していない。
とてつもない規模の殺害と破壊を経験したガザ地区で、イスラエルが何をするにしても、自分たちを憎悪する200万人以上に対応しなくてはならない。イスラエルがどれだけガザ地区にとどまるかによっては、反乱が起きる可能性もある。
そのためイスラエルにとっては、1万人以上の民間人を殺したやり方しか、自分たちにはほかにやりようがなかったのだと証明するのは不可欠だ。停戦を求める国際的な圧力から、支援国がイスラエルを守り続けるためには。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis...
アメリカのジョー・バイデン大統領は当初から、イスラエルには自衛権があるものの、その行使は正しい方法でなくてはならないと述べた。正しい方法とはつまり、戦争法に従うことを意味する。
15日には国連安全保障理事会が、「人道的休止」の延長を求める決議案を採択した。アメリカは拒否権を行使しなかった。
これは重要な展開だった。ガザ情勢についてハマス非難を含まない決議案に、アメリカとイギリスが初めて、拒否権を使わなかったのだ。
●「さらにテロを醸成」
加えて興味深い展開のひとつとして、世界各国の元首脳たちからなる非政府組織(NGO)「長老たち(The Elders)」が、ハマスを非難しつつ、「ガザを破壊し民間人を殺すことは、イスラエルの安全を増すことにつながらない」とする声明を発表した。
「長老たち」は、イスラエルのこうした行動が「中東内外でさらにテロリズムを醸成することになる。この紛争は軍事的手段では解決できない」とも述べた。「長老たち」は、ジミー・カーター元米大統領や南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領らが2007年に結成した。
つまり、停戦要求の圧力はひたすら高まり続けているし、イスラエルはそれを承知している。イスラエルの戦略を疑問視する声が高まる中で、その圧力はいっそう強くなる。
そうそう簡単に終わる状況ではない。「やるべきことはやったのでガザを後にできる」とイスラエルが言えるような、明確な区切りとなる瞬間は今後ないだろうと私は思っている。
そして、その翌日からどうするのかという計画も、イスラエル政府にはないようだ。ネタニヤフ氏は、「テロの再浮上」を阻止するためガザ地区の治安維持にイスラエルはしばらく責任を負うのだろうとしか言及していない。
とてつもない規模の殺害と破壊を経験したガザ地区で、イスラエルが何をするにしても、自分たちを憎悪する200万人以上に対応しなくてはならない。イスラエルがどれだけガザ地区にとどまるかによっては、反乱が起きる可能性もある。
そのためイスラエルにとっては、1万人以上の民間人を殺したやり方しか、自分たちにはほかにやりようがなかったのだと証明するのは不可欠だ。停戦を求める国際的な圧力から、支援国がイスラエルを守り続けるためには。
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