大差をつけられてからプレーが一変
提示されたイエローカードは1枚だけだった。1日の男子準々決勝で日本に敗れた北朝鮮男子代表の6枚を大幅に下回り、試合中も試合後も大きな混乱はなかった。だが、大差をつけられた後半に北朝鮮女子代表のプレーが一変した。
象徴的な場面が、日本のゴールキックで再開された後半37分に訪れた。
ボールの落下点に入った田畑が、ハーフウェイライン付近で待ち構える。そこへリ・クンヒャンが猛然とダッシュ。自陣を向いた体勢のままで無防備になっていた田畑の背後から飛びかかったリ・クンヒャンの右膝が、田畑の後頭部を直撃した。
予期せぬ衝撃を食らった田畑は、ピッチ上で仰向けになって両手で顔を覆っている。一発退場を宣告されてもおかしくない極めて危険なプレー。しかし、キルギスの女性主審が提示したのはイエローカード。リ・クンヒャンは悪びれるどころか、まったく起き上がれない田畑を心配する素振りすらも見せずに最終ラインへ戻っていった。
わずか2分前に投入されていた田畑はプレー続行不可能となり、44分にFW土方麻椰(19、日テレ・東京V)との交代を余儀なくされた。イエローカードの対象にはならなかったものの、42分にFW千葉玲海菜(24、千葉)がスパイクの裏を見せた危険なタックルに倒され、43分には捕球体勢に入ったGK浅野菜摘(26、埼玉)と、前半38分に同点ゴールを決めていたFWキム・キョンヨンが激突。浅野もしばらく立ち上がれなかった。
いずれも後半21分以降の6分間で日本が立て続けにゴールを奪い、事実上、勝負が決まってから起こっている。韓国メディアの『Xportsnews』は、それまでは鳴りを潜めていたラフプレーが繰り返された展開を「北朝鮮の非マナー行為が続いた」と非難した。
「北朝鮮の完敗が事実上、確定した状況で迎えた後半37分に、リ・クンヒャンが空中戦で高く飛び上がり、田畑晴菜の後頭部を右膝で激しく叩いた。主審はすぐにイエローカードを出した。その後も北朝鮮は死力を尽くして得点狩りに出たが、アディショナルタイムの6分を含めて実を結ばず、北朝鮮の凶悪サッカーは日本の前で屈辱を味わった」
同メディアが「凶悪」と表現したのは、韓国女子代表も9月30日の準々決勝で北朝鮮のラフプレーに苦しめられ、1-4で惨敗したからだ。チェルシーで長くプレーした韓国のレジェンド、MFチ・ソヨン(32)も試合後に北朝鮮に対してこう言及している。
「プレーだけでなく、あまりにもマナーに欠けるのでとても大変だった」
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