鏡があるとつい見入ってしまう人間心理を利用し、エスカレーター脇に鏡を取り付けたところ、背後を気にする女性が10倍に増えたことが、大阪府警曽根崎署と科学警察研究所(科警研)などの実証実験で分かった。
行動を強制するのではなく、そっと後押しする行動科学の「ナッジ」理論を活用した取り組み。
結果を受けて盗撮多発エリアである大阪・キタのターミナル駅周辺では鏡の導入が始まり、抑止効果が期待されている。
実験は3月、大阪市北区のJR大阪駅直結の駅ビル「大阪ステーションシティ」内の5カ所のエスカレーターで実施。
このうち1カ所の側面に、A4サイズの鏡面シールと「背後、盗撮に注意」というステッカーを貼り付け、残る4カ所には足元のデッキ部分に「その盗撮、撮られています」と、
盗撮犯に防犯カメラで監視していることを警告するステッカーも貼った。
それぞれ約30分間、エスカレーターで後ろを気にするそぶりを見せた女性の割合を署員が確認したところ、設置前の4.3%に対し、鏡面シールとステッカーを組み合わせたエスカレーターでは40%と10倍に上り、設置2週間後も25%と高い割合を示した。
残る4カ所を加えた平均でも、設置直後は11.9%と約3倍に増加。
設置2週間後も13%と効果の持続がみられた。
同署によれば、ほとんどの女性はエスカレーターに乗っても盗撮のリスクを意識していないが、鏡を通じてステッカーに視線を誘導することで、その点に注意を向けさせることができるという。
実際、大型量販店などでは壁面やエスカレーター周辺に鏡が多く用いられ、多くの人の視線を意識させる構造になっていることも、公共・準公共空間の盗撮防止策を考える上でヒントになったという。
盗撮対策に詳しい防犯アドバイザーの京師(きょうし)美佳さんは「そもそも盗撮に気付かない人は多いが、鏡やステッカーがあると自然と警戒するようになる。
盗撮犯にも『やりづらい』と感じさせる」と評価。同署生活安全課の河盛誠造課長は「導入してくれる施設が増えてほしい」と話した。
https://www.sankei.com/article/20230804-5AW4MUWAJVOBJ...
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