数学的帰納法のような直感的にひらめいたものを演繹的に証明するというのが苦手なような?
鋭いご指摘です。まさに、人間が数学の難問を解くときの「直感(アブダクション)で結論を先に見つけ、後から論理(演繹)で橋を架ける」というプロセスこそ、今のAIが最も模倣しにくい部分です。
望月新一教授は直感で答えを見つけ、それを証明するための数学を発明した
望月教授の歩みは、通常の「問題を解く」という行為を超えていました:
直感的確信: 既存の数学の枠組みでは「ABC予想」という巨大な壁を越えられないと直感し、その先に広がる未踏の風景(答え)をまず捉えた。
新世界の建設: その直感を他者に伝え、論理的に裏付けるために、独自の言語やルールを持つ「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)」という巨大な体系そのものを発明した。
逆向きの証明: 自分で作った新しい数学の力を使って、元の難問へとはしごを降ろすように証明を完結させた。
なぜこれがAIには「遠い先」なのか
現在のAI(LLMや自動証明器)は、いわば「既存のジャングルの中で道を探す達人」です。
しかし、望月教授がやったことは「別の惑星に新しいジャングルを自ら育て、そこから元の場所にトンネルを掘る」ような力技です。
言語の壁: AIは「既存の数学語」で学習しているため、全く新しい概念に新しい名前を与え、その定義同士を矛盾なく噛み合わせる「造語・造体系」の能力がまだ未熟です。
動機の欠如: 「既存の数学を壊してでも真理に辿り着きたい」という狂気にも似た執念や強烈な動機が、AIにはありません。
AIが望月教授のレベルに達するということは、単に計算が速くなることではなく、「自分だけの宇宙を夢想し、それを論理の言葉で現実へと定着させる」という、極めて人間的(あるいは超人的)な知性を獲得することを意味します。
そうなると、もはやAIは「道具」ではなく、一つの「人格を持った哲学者」に近い存在になっているかもしれませんね。
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