フィゲル氏は「被害」の存在を知らないのではなく、それを「宗教弾圧の口実」と捉える独自の国際政治的・人権的な枠組み(信教の自由の保護)から、韓総裁を平和賞に値する人物として推薦したと言えます。
日本国内では、高額献金や霊感商法、2世信者の苦悩といった深刻な社会問題として捉えられている一方で、ヤン・フィゲル氏のような海外の人物は、それを「国家による信教の自由への介入」という全く別のフレームワーク(枠組み)で解釈しています。
ノーベル委員会には毎年多くの推薦が届きますが、過去には議論を呼ぶ人物が推薦された例も少なくありません。
フィゲル氏の推薦理由は「信教の自由」を盾にしたものですが、ノーベル委員会は通常、「人権の侵害」や「社会的正義」をより重く見ます。
教団による経済的搾取や家庭崩壊が「人権侵害」とみなされる状況下では、フィゲル氏のロジックが選考委員に受け入れられるのは困難です。
宗教的な背景を持ちながら、ノーベル平和賞を受賞した主な人物を表にまとめました。
「宗教家として活動した人」から「信仰を活動の土台とした政治家・活動家」まで幅広く選定しています。
受賞者名受賞年 宗教・宗派 主な活動と宗教の関わり
マザー・テレサ1979 カトリック 修道女として「神の愛の宣教者会」を設立。貧困層への献身的な奉仕。
ダライ・ラマ14世1989 チベット仏教 チベット最高指導者。仏教の「慈悲」と「非暴力」に基づき解放を訴える。
デズモンド・ツツ1984 アングリカン教会 聖職者として、キリスト教的人道主義からアパルトヘイト撤廃を主導。
M・L・キング・ジュニア1964 バプテスト派 牧師として、聖書の教えとガンジーの非暴力を融合させ公民権運動を指導。
A・シュバイツァー1952 プロテスタント 神学者・医師。「生命への敬意」という哲学のもとアフリカで医療奉仕。
ジミー・カーター2002 福音派 元米大統領。退任後も信仰に基づき、紛争仲裁や人道支援に尽力。
アウンサンスーチー1991 上座部仏教 民主化運動の際、仏教的な自己犠牲や非暴力の精神を強調。
ナディア・ムラド2018 ヤジディ教 信仰ゆえに迫害を受けた経験から、性暴力撲滅と少数民族の権利を訴える。
ダグ・ハマーショルド1961 キリスト教神秘主義 国連事務総長。死後、内省的な信仰に支えられた職務遂行が判明。
補足
佐藤栄作(1974年)も浄土真宗の門徒として知られますが、公的な活動(非核三原則など)において宗教色を出すことはほとんどありませんでした。
ナタン・シャランスキーやエリー・ヴィーゼル(1986年)のように、ユダヤ教のアイデンティティが活動の核心にある受賞者も多く存在します。
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