陰謀論を語る者は、もはやパンフレットを街頭で配る必要もないし、本を自費出版する必要もない。
動画配信サイトにアカウントを作成し、陰謀論を語る動画をどんどんアップすればいい。
サイトは収益最大化のために、似たような陰謀論関連動画をどんどんユーザーに「おすすめ」する。
ここで起きているのは、「ウソの飽和攻撃」と言うべき状態だ。
飽和攻撃されたユーザーは、群居する霊長類たるヒトの本能をハッキングされて、
最初はなんとなく「そういうことを言う人もいるのか」と思うくらいだが、
やがて熱心に「そうなんだ!」と思い込むようになる。
陰謀論に染まった者は、SNSで集まり、相互に刺激し合うことでますます強固に陰謀論を信じ、
やがて「目覚めた自分が人々に世界の真実を知らせねばならない」と、どんどんネットに
陰謀論情報をアップするようになる。
それが「おすすめ」アルゴリズムで、人々の間に出回り、ますます陰謀論にハマる人が増える。
もちろん陰謀論は本来的にバカバカしいものであって、多くの人は途中で常識を働かせて
「こんなのは間違いだ。相手にするようなものではない」と気が付く。
それゆえ陰謀論のまん延は現状見る程度のものでなんとか済んでいる。
しかし、政治的主張と結びつくと、ネットにおける「ウソの飽和攻撃」によって
現実社会の政治状況が左右されることになる。
識者は「ポストトゥルースの時代」というような言葉を使うことがあるが、
別にTruth(真実)がどうこうという問題ではない。
「ネットの特性を利用したウソの飽和攻撃で、ヒトの本能をハッキングし、
人々の考えを間違った方向に誘導して、現実の政治状況を左右する」ということの中には、
真実はひとかけらとして存在しない。
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