中国の新年の始まりは旧暦である。今年の春節(旧正月)は2月10日だ。
本来ならば、1月下旬ごろから故郷を目指し、延べにして人口14億の2~3倍が民族移動を始める。
ところが、今年は様子がちがう。すでに昨年の秋頃から、田舎に戻る動きが始まっていたのだ。
理由はハッキリしている。景気が低迷していて、地方出身者を受け入れてきたレストランや建設業に従事する労働者が働く場所を失ったからだ。
中国を襲う経済低迷の波は尋常ではない。中国に20校ほどある難関の重点大学の卒業生は、これまでなら不況でも就職が約束されていた。
ところがいまや、上海のトップに位置する復旦大学でさえ、昨年の就職率は18%だった伝えられる。就職活動をする学生に失望感が広がるばかりだ。
そんな歴史的就職難の中、若者の間で人気が急騰しているのが、公務員。
公務員は「鉄飯碗」と言われ、鉄で作ったお碗のように安定しており、一生食いっぱぐれがないとされてきた。
国家公務員の採用試験は平均70倍と伝えられているが、折からの不況で、一部の職種ではなんと6000倍に達したものもあるという(日本の国家公務員の平均倍率は3.2倍)。
こうした、あまりにも過酷な競争状況に、「競争率3000倍の官吏登用試験『科挙』と公務員試験はどちらが難しいか」と、まじめに議論されているほどだ。
科挙の起源は605年ごろの隋の時代に遡り、中国の歴代王朝は権力を家柄やコネでなく、実力で登用した官吏に権力を与えることで官僚体制を維持してきた。
そしていま中国の若者たちは、公務員試験に受かるために科挙と同じように10年浪人する若者も珍しくないという。
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そんな中国の鉄飯碗(公務員)の運命も不況の影響で危うくなってきたようだ。
「我々は6カ月給料がない。間もなく飢え死にする」
遼寧省瓦房店市の市営公園で9月、動物を展示するおりにそんな紙が貼られ、SNSで話題を呼んだ。
飼育員が窮状を訴える内容で、現地を訪れて話を聞くと、給料を半年受け取っていないと認めた。
こうした公務員への給料未払いは、多くの都市で起きている。理由は地方政府の財政難だ。
中国では土地のほとんどが国有地で、管理する地方政府が不動産会社などに土地の使用権を売ることで開発が進む。
使用権の売却収入は、地方政府の収入の約4割を占めてきた。
だが不動産不況でそうした収入が大きく減り、公務員の雇用や賃金に影響が出ている。
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