中肉中背で瞳は薄いグリーン
何度か断られたが、彼に近い複数の人物に話を通してから、話を伺いに行きたいこと、もし、断るならそれで構わないことを伝えてもらい日時を決め、足を運んだ。
約束の時間前に到着すると、「ビッグボス」はすでに待機していた。筆者が名刺を差し出すと、彼も日本式の挨拶をしながら名刺を差し出した。諸般の事情があって、彼の名前を出すことはできない。入り口からヤードに入ると、ユンボやダンプが視界に入る。解体で使われる道具類は整理され、棚に収納されていた。
中肉中背の「ビッグボス」は、薄いグリーンの瞳でジッとこちらの目を見て「何を聞きたいの?」と口にした。
先日の事件のこと、その後緊張状態にあるクルド人と日本人との関係について、在日クルド人を代表して話を聞きたいと伝えた。
彼はしばし考えた後、「どうぞ」と静かに記者を椅子に座らせると、ゆっくりとした口調で話し始めた。
喧嘩を止めるために集まっていた
「あの事件のことですね。ここで結婚をしていたクルド人夫婦がいたのです。二人はとても仲が良かったのです。でも、女性が別のクルド人男性を好きになってしまって、(その男性と)二人で埼玉から神奈川に逃げてしまいました。
その後、時間が経って女性はトルコに帰り、男性だけが川口に戻ってきた。彼は私のところで勉強して、3年くらい前に親族と一緒に会社を作った人です。彼が戻って来たことを知った女性の弟とその親族が、彼を追いかけてナイフを使ったわけです。
クルド社会では日本よりも男女の関係には厳しいのです。それと、帰ってきた男性のお金に関わるトラブルもあって、その両方の原因があって喧嘩になったのです。
マスコミでは、病院前でクルド人100人が乱闘騒ぎをしたという報道になっていますが、本当は、それ以上の喧嘩にならないよう、双方の親族や友人たちが集まったのです。
喧嘩を止めるために集まったのに、大勢で喧嘩をしたという逆の報道になってしまった。その場で警察がたくさん出てきて、互いに興奮した結果があの騒ぎだと思ってます。
もちろん病院や川口市民に迷惑をかけてしまったことは心から申し訳ないと考えています。事件後、すぐに関係者を通じてクルド人を代表して病院や役所の関係者に謝りに行きました」
返信する