妊娠6か月。安定期に入ったものの、つわりは重くなる一方でした。
「買い物袋を抱えながら、長い距離を歩くのはつらいかな」
あの日、スーパーの出入り口に近い、優先駐車場に車を止めました。
ただ、それだけだったのに…。
その場所を必要とする人がほかにもいることはわかっています。だけど、私にとっても必要な場所だったんです。
◆優先ではだめですか?
まだ厳しい暑さが続いていた去年8月のことです。
長野県に住む30代の母親は、3歳と1歳の娘たちの子育てに追われていました。
お腹には新しい命が宿っていました。
あの日は夕飯の買い出しのため、1人でスーパーマーケットへ車で向かいました。
妊娠6か月。安定期には入ったものの、つわりに悩まされていました。
母親
「当時はつわりによる吐き気がひどく、定期的に病院に通って点滴を受けていました。医師からは入院を勧められたこともありましたが、子育てもあったので…」
重たい買い物袋を持って長い距離を歩くことには不安があったため、スーパーの出入り口近くにあった優先駐車場に車を止めました。
運転席から降りるとすぐに、誰かが近づいてくる気配がしました。
振り返ると、つえをついた高齢の男性が立っていました。
その表情から、何か不満を感じていることがすぐにわかりました。
〔高齢の男性〕「どこか具合でも悪いのか」
〔母親〕「妊娠中なんです」
〔高齢の男性〕「ここは健康な人が駐車するところじゃない」
〔母親〕「妊婦も利用できると思って」
〔高齢の男性〕「妊娠している証拠や本人確認できる証明書を見せなさい」
お腹はまだそれほど大きくなっていないから、うそをついていると思われてしまったのかもしれない。母親はマタニティマークを見せたり、説明を繰り返したりして、何とか理解してもらおうとしました。
それでも、男性はいっこうに納得する気配はありませんでした。
そして。
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