■「喫煙率が低下しているのに、肺がん死亡率は上昇しいてる」と言う説明は正しいか?
週刊誌やネット上で「タバコでがんになるというのは嘘」という記事を目にされたことはないだろうか。
その根拠としては、「日本は喫煙率が下がっているにもかかわらず、肺がんの死亡率は上がっている。
だからタバコを吸うと肺がんになる、というのはウソだ」というものである。
確かに、1960年代は8割の人がタバコを吸っていたが、そこから喫煙率は下落の一途をたどり、
近年では約2割となった。
一方で、肺がんの死亡率は上昇し続けている。
「タバコが肺がんの原因になる」ということはタバコの箱にも書いてあるほどだが、だとしたらなぜ、
肺がんの死亡率は上がっているのだろうか。
一部の評論家たちが主張するように、実はタバコは肺がんの原因ではないのだろうか?
無論、これは全くのデタラメだ。
喫煙率が下がってから肺がんの死亡率が下がるまでには約30年のタイムラグ(時間差)があるから
そう見えるだけである。
また、日本はものすご勢いで高齢化しているので、その影響でがんによる死亡率が上がってしまう
という現象も加わっている。
高齢になればなるほど、がんを発症したり、がんで亡くなる可能性は高まるからだ。
逆に言えば、多くの人ががんを発症する年齢まで長生きできる時代になったということの裏返しでもある。
高齢化の影響を排除するためには、年齢構成を補正した「年齢調整死亡率」を使用する必要がある。
補正後の正しいグラフを見れば、喫煙率の低下に伴い、肺がん年齢調整死亡率は1996年をピークに
年々低下していることが分かる。
(喫煙後すぐに肺がんになるわけではないので、発症までに約30年のタイムラグが生じる。)
つまり、死亡率が高くなっているのは高齢化が主因であり、その影響を排除すると、やはり死亡率は
右肩下がりで減っているということだ。
数多くの研究でタバコが肺がんの原因になることは明らかになっており、もはや議論の余地はない。
グラフを悪用し、読者をミスリーディングしようとするメディアや評論家は悪質であると言えるだろう。
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