・恒大集団清算で加速する中国経済崩壊の足音
1月29日、香港の高等裁判所が中国恒大集団に清算命令を出した。恒大集団は、不動産大手で2兆3882億元(約50兆円)の負債総額を抱える。
そんな企業の精算命令は香港史上最大だ。前日の28日に政府が「空売り」規制策を強化したことでわずかに落ち着いて見えた株価だが、
不動産不況による景気の先行き不透明感が強まり、29日の上海株式相場は5営業日ぶりに反落した。これは一過性のものと見るべきではないだろう。
・進まない経済回復
中国の不動産関連業界は、国内総生産(GDP)の3割を占めるとされる。
「値上がり神話が崩れた高級マンションを買う人間はもういない」──中国の街で聞かれる呟きだ。
不動産デベロッパーのデフォルトが相次ぐ中、街のあちこちに、資金繰りができないまま工事途中で放り出された廃墟のようなマンションが立ち並ぶ。
主要70都市平均の新築価格は、2022年春から下がり続ける。
中国では、建設計画の段階で購入契約が結ばれ、多額の頭金とローンの支払いが始まる。
工事が止まったマンションでは、金を返せと叫ぶ人々が抗議行動を起こすなど、この数年、大きな社会問題となっている。
これまで資産運用の手段だった不動産投資の夢が崩れただけではなく、これから、少子化で人口が減る中国では、長期的に不動産業界が復活するハードルは高い。
政府は「タンピン(寝そべる)」と呼ばれる、モノを持つことに関心がなく、働く意欲を失った若者の増加に警戒感を強める。
中国国家統計局は、16〜24歳の若者の失業率は約20%と発表してきた。しかし、家で寝そべっていたり、親に頼って生活する若者(非学生)は1600万人と言われ、
北京大学の張丹丹副教授は、「若者の失業率は46.5%に達した可能性がある」と指摘している。
しかも、ゼロ・コロナ政策の失敗により消費者マインドは冷え、節約嗜好が強まっている。
住宅だけでなく、ポルシェやロールス・ロイスといった高級車、贈答品となる高級白酒などの売れ行きも軒並み減少している。
中国の経済全体が低迷しているのだ。
・「隠れ債務」は約1400兆円
米中対立の先鋭化により、主要国向けの輸出の先行きは暗い。アメリカなど民主主義の国々は、「脱・中国のサプライ・チェーン作り」に躍起になっているからだ。
また、政府がどれだけ補助金を出しても、少子高齢化は止まらず、労働人口の減少は続く。
これに、追い打ちをかけるのが、株価下落に象徴される、マネーの海外への流出だ。中国経済の先行きを不安視したマネーが海外に逃げ始めている。
地方政府の「隠れ債務」の大きさはIMFによると66兆元(約1400兆円)で、政府がこれをどう処理できるのかが、経済の先行き不安を増大させている。
https://www.news-postseven.com/archives/20240130_1938161.html...
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