賃貸か持ち家か―。不動産のプロたちが真っ二つに分かれ、長きにわたり激しい論争が繰り広げられてきたこの命題に、ついに決着がつくかもしれない。
このほど、1840年にイギリスで創設された名門総合医学誌出版社「BMJ」が発行する「疫学公衆衛生ジャーナル」に、住宅論争を左右するある重要な論文が掲載されたのだ。
海外の最新サイエンス情報に詳しいライターの奥窪優木氏が言う。
「5人のノーベル賞受賞者を輩出しているオーストラリア屈指の名門・アデレード大学の『住宅研究チーム』が、昨年10月10日、驚きの研究結果を発表しました。
論文のタイトルは『住宅環境は老化の早さと関連するか』というものです。
その研究結果は、賃貸住宅に住んでいる人は持ち家の人と比べ老化が早まる、つまり早死にする可能性があるという衝撃的なものでした」
総務省の統計資料によると、日本の住宅総数のうち3割以上は賃貸物件だ。「賃貸に住んでいると早死にする」というこの研究が事実だとすれば、ただ事ではない。
なぜ、賃貸だと早死にするのか。どれほど早く老化が進むのか。アデレード大研究チームのメンバーであるエンマ・ベイカー教授に聞いた。
「我々のチームは、イギリスに住むさまざまな性別・年齢の1400人以上のデータをもとに研究を進めました。
20~30年という長期間にわたり、仕事・経済状況・教育水準・食生活・喫煙や飲酒の有無・住宅環境の変化など、生活にかかわるさまざまな項目の質問に協力してもらったのです。
くわえて、1400人を超える協力者から、定期的に血液サンプルも提出してもらいました。それにより、生活環境がどのように生物学的年齢に影響するかを明らかにすることができたのです」
ベイカー教授によると、老化に関する最新研究では、血液サンプルから「DNAのメチル化」を測定するのが有効であると証明されているという。
メチル化は「ヒトの老化を促進する基本的なメカニズム」。つまり、血液サンプルから「一定の期間でどの程度メチル化が進んだか」を調べれば、
生物学的にどれくらい老化が進んでいるかが判明するというわけだ。
つづく
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