「日韓のポップカルチャーの影響についてお願いします」。そんな講演や特別講義の依頼が増えている。
期待されているのは、日本におけるKポップ人気や、韓国での漫画やアニメの隆盛が将来の日韓関係によい影響をもたらすはずだ、という話である。
韓国政府系の団体の好むお題であり、尹錫悦政権の強い希望もあり、さまざまな所で同様の企画が組まれている。
しかし、このような依頼を受けるたびに筆者は頭を抱える。なぜならポップカルチャーと外交との関係は、それほど単純なものではないからだ。
例えば、日本で本格的な韓流ブームが始まったのは2003年。いわゆる「ヨン様ブーム」からで、日本における韓流には既に20年以上の歴史がある。
ではそこから今日までの日韓関係が平穏に推移したか、といえばそうではない。
05年の竹島問題、11年から激化する慰安婦問題、18年の大法院(最高裁)判決以降の元徴用工問題と、むしろこの時期の日韓関係は問題が次々と発生し、悪化の一途をたどってきた。
他方、日本における韓流ブームはこれら外交関係に無関係かのように進んできた。
この一見矛盾して見える状況はどうして生まれたのだろうか。確認しなければならないのは、文化は否定的な効果を持っているのではないということだ。
互いの文化を愛好し、旅行経験がある人が、両国関係に対しても好意的なのは各種調査でよく知られている。
しかし問題は、日韓両国においてこのような人々は依然として少数派にすぎないことなのだ。
例えば最近の調査によれば、韓国のポップカルチャーを愛好していると答えた日本人は36%、
日本のポップカルチャーを愛好している韓国人はその約半分の18%にすぎない。
日本国民の3分の1以上が韓国のポップカルチャーに親しんでいる、というのはすごい数字であるが、それでも3分の2は関心を有していない。
他方、韓国における日本のポップカルチャーへの関心ははるかに低く、その関心の57%はアニメと漫画に集中しているにすぎない。
旅行経験も同じであり、同じ世論調査で韓国を訪れたことのある日本人は23%、日本訪問経験のある韓国人も37・4%にすぎない。
一見すると両国にあふれ返るかのように見える観光客も、両国全体から見れば少数派にすぎない、のである。
答えは簡単だ。少数派にすぎない人々がどれだけ日韓両国間で互いに関心を持とうとも、それだけで両国の雰囲気全体が変わるわけではない。
だからこそ、ポップカルチャーに過度に期待をせずに、堅実な外交的努力を積む必要がある。
そもそもそれに「Kポップ」などと国名の頭文字を付けて呼ぶのも健全とは言えないだろう。
文化はあくまで文化であり、外交がそれを過度に利用し、傷つけないことこそ大事なのではないだろうか。
https://www.newsweekjapan.jp/kankimura/2023/12/post-45.ph...
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