日本の教科書に書かれた「世界四大文明」という言葉。じつは「学説」ではないことはあまり知られていない。
「四大文明」という言葉が長年一人歩きし、「世界に最初に生まれた4つの文明」というイメージが広く定着している。だが、じつはほかにも文明は生まれていた。
□「四大文明」と言ったのは、口調がいいから
日本の読者にとっては、「世界四大文明」(メソポタミア、エジプト、インダス、黄河)は耳慣れている言葉であろうが、
じつは学説ではない。考古学者の江上波夫が普及させた教科書用語である。
それは、江上が関わった山川出版社の高校教科書『再訂世界史』に1952年に登場した特異な文明観であり、欧米には存在しない。
なお「四大文明」という呼称は、20世紀初頭には日本と中国に存在していた。
ユーラシア史家の杉山正明によれば、江上はマヤやアンデスなど世界には他に文明が栄えたことを認めていた。
一方で「四大文明」と言ったのは、「口調がいいからで、本当はいろいろあるさ」と杉山に大笑いしたという。
ところが「四大文明」は一人歩きして長年にわたってマスメディアや教科書に取り上げられ、旧大陸(ユーラシア大陸とアフリカ大陸)中心的な世界史観を形成してきた。
古代アメリカ文明はAncient American Civilizationsの訳であり、ここでいう「古代」は日本列島の縄文時代から室町時代に相当する。日本史の古代とは異なるので、気をつけていただきたい。
メソアメリカとアンデスは、旧大陸社会と交流することなく、アメリカ大陸でそれぞれ独自に興隆した一次文明であった。
一次文明とは、メソポタミア文明や中国文明と同様に、もともといかなる文明もないところから独自に生まれたオリジナルな文明を指す。
じつは一次文明は世界に4つしか誕生しなかった。
つまり、メソアメリカ文明とアンデス文明は世界で4つだけの「世界四大一次文明」の二つを構成した。
メソアメリカとアンデスという一次文明の研究は、旧大陸や西洋文明と接触後の社会の研究だけからは得られない新たな文明史観や視点を提供して、
西洋中心史観や旧大陸のいわゆる「四大文明」中心的な世界史の脱構築につながる。
アメリカ大陸の二大一次文明に関する研究は、日本でもかなりの蓄積がある。
しかし残念ながら、今なお学術研究と一般社会のもつ知識の隔たりは大きい。
https://gendai.media/articles/-/12016...
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