イベルメクチンのCOVID-19の治療薬としての有効性が認められたケースはなく、治療薬として承認した国もない。
COVID-19の流行初期、既存薬を転用するドラッグリポジショニングが試され、in vitro(試験管内での)研究でSARS-CoV-2を含む複数の
一本鎖プラス鎖RNAウイルスに対して抗ウィルス効果を持つことが示された。
その後のin vitro研究では、サル腎臓細胞培養におけるSARS-CoV-2の複製をIC502.2 - 2.8 μMで阻害することが分かった。
しかし、この情報に基づいて、COVID-19の治療中に抗ウィルス効果を得るためには、ヒトでの使用について承認された、または安全に
達成できる最大量をはるかに上回る用量が必要となる。実用的な難しさは別として、このような高用量は現在のヒトへの使用承認の対象
外であり、また抗ウィルス作用のメカニズムは、宿主細胞プロセスの抑制、特にインポーチンα/β1による核輸送の阻害を介していると考
えられているので、有害となる可能性がある。インポーチンα/β1を治療用量で阻害する他のいくつかの薬剤は、全身毒性と狭い治療域の
ために臨床試験に失敗している。
その後のヒトを対象にした研究では、COVID-19に対するイベルメクチンの有用性を確認することはできず、2021年には、有用性を示した
研究の多くに科学的不正行為や欠陥があることが明らかになっている。しかし、有効性に関する誤った情報がソーシャルメディア上で広く
拡散され、イベルメクチンは陰謀論者や反ワクチン主義者など一部の人々による熱狂的な支持の対象となっている。また、イベルメクチン
に関する問題のある研究は、公共の政策立案や個人の意思決定をミスリードする一因となっている。
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