ヒント:ファンクラブ
1100万人×4000円
揺らぐジャニーズ経済圏 延べ1100万人ファンも葛藤 スポンサー撤退の連鎖 「世界の目」無視できず
ジャニーズ事務所が揺れている。7日の記者会見で、故ジャニー喜多川氏によるタレントらへの性加害を初めて認めた。背景にあったのは、国連を含めた海外の厳しい視線。スポンサー企業も世界展開する大手ほど敏感で、広告などへの起用をやめる動きが止まらない。延べ1100万人のファンを抱える巨大な経済圏の亀裂は広がっている。
9日、東京・丸の内の帝国劇場には長蛇の列ができていた。ジャニーズ事務所に所属するSnow Man、SixTONES(ストーンズ)のメンバーが主演する「DREAM BOYS」の公演初日。スマートフォンを掲げてポスターを撮影するファンたちの熱気はいつもと変わらない。
同作品はキャストや構成を変更しながら20年近く上演してきたジャニー氏の代表作のひとつ。ただ今回、2019年の死去後も「エターナル・プロデューサー」としてポスターに刻まれてきた同氏の名前は消えていた。
ジャニーズ事務所が設けた外部専門家チームは8月末、ジャニー氏による性加害は半世紀以上に及び、被害者が数百人に及ぶという証言もあると報告書を出した。事務所はついに事実を認め、新社長に就いた東山紀之氏は「救済・補償に誠心誠意取り組むことがすべての出発点。深くおわびします」と謝罪した。
帝国劇場に集ったファンたちに聞くと、その胸の内は複雑だった。「推しが被害に遭っていたらつらい」(栃木県の40代女性)、「ジャニーズという名前が入ったグループもあるので社名は残してほしい」(静岡県の女子高校生)。都内の会社員、桑野晴佳さん(23)は「タレントに罪はない。(事務所は)彼らが必死に努力して得たものを奪わないようにしてほしい」と訴える。
彼女ら20人(10~50代)に年間のジャニーズ関連の消費額も尋ねてみた。公演チケット、交通費や宿泊費、グッズ代……。250万円を筆頭に4人が150万円を超え、平均は55万円に達した。
事務所が積極的に実態を公表することはないが、「ジャニーズ経済圏」はエンターテインメント業界で類をみない巨大さを誇ってきた。
まずはファンクラブの会員数。新たに入会した人がSNSで投稿する会員番号から、その数を推測できる。日経MJが15グループについて調べたところ、延べ1100万人を超えた。トップは嵐の約300万人だ。
テレビ業界の分析を手掛けるニホンモニター(東京・港)とワイヤーアクション(東京・中央)には、ジャニーズ所属タレントのテレビ出演回数の抽出を依頼した。その合計数は22年に6240番組に及んだ(再放送、ガイド番組、3分以下の出演は除く)。ぴあ総研の22年音楽ポップス興行規模調査によると、上位10位中6グループをジャニーズが占める。
ジャニー氏の性加害については、1980年代から被害者たちの暴露本が出版されていた。99年には週刊文春が報じ、ジャニーズ事務所が名誉毀損で提訴したが、文春側の勝訴が確定している。ただ、日本のメディアもスポンサー企業も検証を進めず、大きなうねりとはならなかった。
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