青葉真司被告「こんなにたくさんの人が亡くなるとは思わなかった」京アニ放火殺人事件初公判
日刊スポーツ新聞社
36人が死亡し、32人が重軽傷を負った19年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた無職青葉真司被告(45)の裁判員裁判の初公判が5日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で行われた。
車いすに乗って出廷した青葉被告は起訴内容を認め、「こんなにたくさんの人が亡くなるとは思わなかった」と述べた。
弁護側は「人生をもてあそぶ闇の人物への対抗手段、反撃だった」と事件当時、心神喪失の状態だったとして無罪を求めた。検察側は完全責任能力があったと主張した。
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京都地裁最大の101号法廷。午前10時半過ぎ、青葉被告は、刑務官に付き添われ、背もたれの高い特殊な車椅子に乗って法廷に姿を見せた。
丸刈りにマスク姿で、青いジャージーの上下を着用。右頬は赤黒くなり、後頭部にもやけどの痕があった。裁判長から名前を尋ねられると「青葉真司です」とくぐもった声で答えた。
平成以降最多の犠牲者を出した殺人事件。「こうするしかないと思った」「こんなにたくさんの人が亡くなるとは思わなかった」。声が小さく、裁判長から聞き直された場面もあった。
検察側は午前中の冒頭陳述で、青葉被告が凶行に走った動機や背景、生い立ちなどを説明した。
「京アニに小説を盗まれた」「公安に監視されている」といった妄想があったが、妄想に支配された犯行ではないとして「完全責任能力があった」と主張。
被告は京アニの小説コンクールに「通算10年かけた渾身(こんしん)の力作、金字塔」を応募したが落選。被告が京アニや、憧れていた同社所属の女性監督に盗用されたと思い込み、
社員も連帯責任を負うと考え、「京アニのせいで人生がうまくいかないという筋違いの復讐(ふくしゅう)を決意した」と強調した。
京アニに放火する1カ月前の19年6月18日、何も思い通りにならないことに怒りを強め、青葉被告は包丁6本を持って、自宅があった埼玉県のJR大宮駅で無差別殺人を計画したが、断念した。
弁護側は「事実関係を争わない」とした上で、被告が事件当時、精神障害による心神喪失の状態だったとして無罪を主張した。
仮に無罪ではなくても心神耗弱だったとして刑の減軽を求めた。被告が妄想を抱いていたとして「(被告にとって)この事件は人生をもてあそぶ闇の人物への対抗、反撃だった」と説明した。
公判は来年1月25日の判決まで予備日を除き24回開かれる。真相を知りたい。
そう願い続けてきた遺族や被害者ら計約50人が法廷に入ったが、午後4時ごろに閉廷するまで青葉被告から、遺族への謝罪の言葉はなかった。
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