中国企業に研究データ漏洩か、産総研の中国籍研究員逮捕
国立研究開発法人・産業技術総合研究所(茨城県つくば市)に所属する中国籍の研究員の男(59)が自身の研究データを中国企業に漏らした疑いが強まり、警視庁公安部は15日、男を不正競争防止法違反(営業秘密の開示)の疑いで逮捕した。
産総研は日本で最大級の公的研究機関で、2千人を超える研究職員が在籍する。公安部は、持ち出された情報が産総研の営業秘密に当たるとみて、男と中国企業との関係などを調べている。捜査関係者によると、国の研究機関から中国への情報流出を立件するのは異例という。
公安部によると、逮捕したのは権恒道(チュエン・ホンダオ)容疑者。逮捕容疑は2018年4月、絶縁ガスにも使われるフッ素化合物の合成技術に関する研究データを中国企業のメールアドレスに送信した疑い。絶縁ガスは電気を通さない気体で、変圧器など電気機器の絶縁体として使われる。
公安部は権容疑者の認否を明らかにしていない。捜査関係者によると、権容疑者は中国軍とつながりが深いとされる「国防7校」の一つ、南京理工大学の出身。02年4月から産総研で勤務していた。同じく国防7校の一つである北京理工大学の教職に就いていたこともあるという。
公安部は15日、つくば市内にある権容疑者の自宅など複数の関係先を家宅捜索した。
高度な技術情報が国外に持ち出される事件は後を絶たない。
20年1月、ロシア外交官の求めに応じて通信設備の構築に関わる機密情報を持ち出したとして、ソフトバンク元社員が不競法違反容疑で警視庁に逮捕された。東京地裁は同年7月、元社員に有罪判決を言い渡した。
21年には積水化学工業の元社員がスマートフォンに使われる技術の機密情報を中国企業側に漏らしたとして不競法違反罪で在宅起訴され、のちに有罪判決を受けた。
不競法は、企業や組織で秘密として管理され事業活動に有用な技術上、または営業上の情報を「営業秘密」と定義し、不正に取得したり開示したりする行為を禁じる。違反すれば10年以下の懲役か2千万円以下の罰金、または併科と規定。営業秘密を日本国外で使用する目的を持つ相手に漏洩した場合、罰金がさらに重くなる。
政府は経済安全保障の観点から先端技術の海外流出対策を強化している。先端技術の海外流出を防ぐため、警察当局は事件化に加えて、企業や研究機関への助言にも取り組んでいる。
産総研は15日、「職員が逮捕されたことは誠に遺憾。警察の捜査に全面的に協力するとともに、厳正に対処する」とのコメントをホームページで発表した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE156SR0V10C23A6... (日本経済新聞)
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